逮捕前の弁護活動と逮捕後の弁護活動の違い
1 身体拘束がなされているか、時間制限があるかが大きな違い
逮捕前後の弁護活動の違いをもたらす大きな違いは、被疑者の身体拘束がなされているかどうかです。
また、被疑者としての身体拘束には、逮捕段階で最大72時間、勾留段階で最大20日間という時間制限があり、これも弁護活動に大きな違いをもたらします。
2 逮捕前の弁護活動
⑴ 逮捕を防ぐための弁護活動
逮捕前の弁護活動として、逮捕される可能性が高い場合には、逮捕を防ぐための活動、すなわち弁護人として選任してもらい、捜査機関に対して逃亡や証拠隠滅のおそれがないこと、身元引受人の存在、弁護人を介して被害者との示談を進めることなどを主張し、逮捕されないために活動することがあります。
⑵ 在宅事件の弁護活動
逮捕されない、いわゆる在宅事件の場合、検察官が起訴・不起訴を判断するにあたって、なるべく被疑者に有利な結果になるよう弁護活動を行います。
すなわち、被害者がいる場合には、被害者と示談をし、許しをもらえているかどうかが、検察官の判断に大きな影響を与えますので、示談交渉がメインの弁護活動になります。
もし被害者と示談ができない場合や、そもそも被害者がいない場合は、贖罪寄付によって被疑者の反省の気持ちを示したり、被疑者に有利な事情をまとめて意見書を作成し、検察官に提出したりすることもあります。
3 逮捕後の弁護活動
逮捕後は、被疑者が身体拘束されているので、被疑者が留置されている警察署などに行き、被疑者と接見し、今後の弁護活動の方向性、警察官や検察官の取調べに対応する際のアドバイス等を行うことになります。
また、身体拘束からの解放を目指します。
逮捕段階であれば、勾留を阻止するため検察官や裁判官に働きかけ、勾留の決定が出てしまった場合には、勾留に対する準抗告という不服申立ての手続きを行うことがあります。
残念ながら身体拘束からの解放がなされない場合は、身体拘束がなされている上で、検察官の起訴・不起訴に向けた判断がなるべく被疑者に有利になるよう、示談交渉等を行います。
ただ、この場合、逮捕前の段階とは異なり、よりスピーディーな弁護活動が求められます。
刑事裁判における弁護士の役割
1 刑事裁判において弁護士が就く場合
もし、警察や検察による捜査の結果、公判請求をされて刑事裁判を受けることになった場合、弁護人として弁護士をつけることができます。
弁護人をつけるには、自ら依頼して弁護人になってもらう私選弁護人をつけるほか、国に指名された弁護士が弁護を担当する国選弁護人がつけられる場合があります。
いずれにしろ、刑事裁判では、弁護人という立場で、弁護士が様々な弁護活動をすることになります。
2 事実関係を争う場合
もし、起訴された事実を争う場合、弁護人は、検察官の主張する事実を弾劾し、裁判所に、少なくとも、検察官の主張する事実の立証が十分ではないと判断してもらう必要があります。
そのために、弁護人は、検察官の主張する事実の裏付けとなる証拠について信用性を弾劾するほか、被告人の主張する事実の裏付けとなる証拠を提出するなどの弁護活動を行うことになります。
その上で、弁護人は、刑事裁判における被告人の味方として、検察官の主張する事実がないことを主張して、被告人が無罪であることや検察官の主張するような犯罪に及んでいないことなどを主張することになります。
3 事実関係を争わない場合
もし、起訴された事実を争わない場合、弁護人は、被告人に有利な事情を裁判所に示し、刑罰が被告人に少しでも有利になるように裁判所に働きかける弁護活動をすることになります。
具体的には、示談交渉をして弁償をしたり、被害者に被告人を許してもらったりするほか、証人として被告人の家族に出廷して、今後は被告人が罪を犯さないようにしっかりと監督する旨証言をしてもらうことなどがあります。
また、被告人自身にも質問して、罪を認めて反省していることや、二度と罪を犯さないことを固く誓っていることなどを的確に裁判所に伝えるようにします。
そのために、被告人や証人と、質問内容や回答内容についてよく打ち合わせを行います。
4 保釈請求
また、刑事裁判と並行して、被告人が勾留されていれば、被告人の保釈を請求し、被告人の身柄の解放を図ることも、重要な弁護活動の一つということができます。